上半期読書まとめ③

 

・女の機嫌の直し方

著者;黒川伊保子

きっかけ;どこかの書店で、タイトルに惹かれて

感想;女という生き物は本当によくわからない...という問題に恋愛アドバイザーでも占い師でもなく、ついにAI開発者がメスを入れる時代が来た。これはぜひ女性に読んでほしい。私は私の機嫌の治し方がわからず、そのことで大いに悩み多方に迷惑をかけた経験があるので読んだ。要するにだいぶ前から言われている「男女の脳は違うのでそれを分かり合いましょう」という話なのだが、多くの人はこの本を読んだ後も「そんなことはわかってるけどできないから問題なんだよ」と思うことであろう。私もそう思った。ただ、私は著者自身の息子を育てる上での姿勢に非常に感銘を受けたためそちらを強調したい。彼女は子育てが「思い通りにいかない」ことを楽しんでいる。楽しむことができる。なぜなら彼女はAI開発者で、思い通りに行くものを自分で作ることができるからだ。息子がロボットだったらつまらないとまで言い切っている。苦しくても楽しめたら勝ちですね。

話を聞かない男、地図が読めない女

話を聞かない男、地図が読めない女

 

 

・女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言

著者;三砂ちづる

きっかけ;BETTARA STAND 日本橋 by YADOKARI – 「BETTARA STAND 日本橋」は、元駐車場となっていた土地を移動可能な動産・タイ二ーハウスやDIYで作る屋台などを利用したイベントスペース・オープンカフェキッチン施設です。のミニ図書コーナー

感想;こちらはエッセイ集である。著者の三砂ちづるさんは現代の津田梅子というか、津田塾大教授というか、すごい方である。全然おせっかいなんかではない。オムツ離れの話とか、ブラジルでの家族・仕事の概念など盛りだくさんで非常に面白いのだが、特に印象に残ったのは「怒る」ことについてだ。著者はもっと怒ろう、と提案する。「女の怒りはポイント制」なんて誰かがうまいことを言っていたが、なぜポイントが貯まるのか、そして一斉に還元されるのか考えたことがあまりない。ただ火山がいつ爆発するのかをビクビクして過ごすしかないのだろうか。私は、私も含めて周りの人々には「怒る」練習が足りていないと感じる。「怒ってはいけない」と教わることはあっても、適切なやり方を教わる機会がないから当然かもしれない。貯めて貯めて大爆発しなくても、もっと平和的且つ対象に有効なやり方があるはずだ。私のこれからの課題である。

女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言

女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言

 

 ・百合のリアル

著者;まきむぅ(牧村朝子)(@makimuuuuuu)さん | Twitter

きっかけ;著者による大学の講演会で

感想;まきむぅはとにかく可愛らしかった。講演会の感想と併せて書きたい。まず、著者も述べているが、この本はいわゆる今話題の(流行で終わらないことを祈る)LGBTと呼ばれている人々だけのためのものではない。同時に性の多様性について考えることは、人間そのものの多様性について考えることにつながる。「女」も「百合」も「LGBT」も、レッテルに過ぎない。自分に合わないレッテルを貼られるのは誰だって嫌いだ。私たちは肩書きとしてそれらを使わなければならない時もあるが、自分で選ぶのと他人から呼ばれるのは違う。あくまで「私は他でもない私である」ということを尊重するべきだ、と著者は主張する。「モテ」とは?「女子力」とは?当たり前に飛び交う言葉を見直す必要があるだろう。

百合のリアル (星海社新書)

百合のリアル (星海社新書)

 
百合のリアル 増補版

百合のリアル 増補版

 

 

・かたちだけの愛 

著者;平野啓一郎

きっかけ;朝日新聞のコラム

www.asahi.com

感想;恋愛小説を中学生以来読んでいなかったけど久しぶりに「これは!」と感じた(その時たまたま失恋中だったからかもしれない)。ひらがなと漢字の使い分け方が素敵な文体だった。コラムにも引用されているような、愛と利己心の描写が感動的で、フロムの「愛するということ」にも通じるところがある。他にもセックスを「健康」と言ったり、小説でしか言えない、薄々みんなが思っていることを言い切っている。この本自体は買わなかったが影響を与えたとされる(本文中にも引用あり)日本が誇る変態・谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』は買ってしまった。

かたちだけの愛 (中公文庫)

かたちだけの愛 (中公文庫)

 
陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

 

 

・愛するということ

著者;エーリッヒ・フロム

きっかけ;大学の友人

感想;数年前に一度挫折したが、ふと思い出して再挑戦した。新訳版だからか読みやすく、引用も多くて助かった。読んでいると死んだはずの著者に診察されているような気持ちになってきて怖い。失恋中に読むべきではないが、失恋したときくらいしか読もうと思わない。とはいえ内容はもちろん「恋」ではなく「愛」の話で(その違いは本書で)、恋愛だけには留まらない。問題なく愛情を注いで子どもを育てることがいかに難しいかを思い知らされた。いつか英語でも読んでみたい。

愛するということ

愛するということ

 

 

 ・女心についての十篇 - 耳瓔珞

著者;安野モヨコ

きっかけ;忘れた

感想;とにかく挿絵や装飾が美しくて、お腹いっぱいになる。この中では川端康成の「むすめごころ」がもっとも歪んでいるのに可愛らしくて気に入った。恐らくモヨコ先生のお気に入りであろう、岡本かの子という作家を知る機会ができて嬉しい。私は以前から先生の漫画の大ファンで、最新の『鼻下長紳士回顧録』も読んだが、この漫画といい耳瓔珞といい、この文庫の前のシリーズの『晩菊』(谷崎潤一郎の脚フェチ話収録)といい、取り上げている国は違えど最近の先生のテーマは「変態」であるに違いない。

女心についての十篇 - 耳瓔珞 (中公文庫)
 
鼻下長紳士回顧録 上 (フィールコミックス)

鼻下長紳士回顧録 上 (フィールコミックス)

 

2017年上半期読書まとめ②

ザムザから手塚治虫ファム・ファタールに行きます。

 

・恋しくて

著者;村上春樹

きっかけ;生協の本屋で、表紙に惹かれて

感想;この本の真髄は「村上春樹が選んだラブストーリー」というところにあるのではなく、一番最後に彼が書いた「恋するザムザ」にある。恐らく、彼自身も選んでいるうちに書きたくなっちゃったのだろう。とても微笑ましい作品で、読み進めたいと同時に読み終わりたくなかった。私はザムザを、原作のカフカの小説ではなく手塚治虫の短編集『メタモルフォーゼ』を通して知った。その絵の芋虫が強烈で、すっかりそのイメージが頭にこびりついてから原作を読んだので、毒虫の挿絵を一切許さなかったとしているカフカには少し申し訳ない。そう言えばこの作品の日本語の題は「変身」だ。しかし英題では"metamorphosis"であり、"transformation"ではないなと今気がつき、それでは両者の違いはなんだろう。メタモルフォーゼと言えばエッシャーだよなぁ、と連想が止まらない。ちなみにこの『恋しくて』は日本以外の文学作品の寄せ集めなのに表紙に竹久夢二の『黒船屋』を選び、それをこれだけ大幅にトリミングしても認識できるようギリギリのところで攻めている。

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

 
変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

 
メタモルフォーゼ 手塚治虫文庫全集
 
エッシャー: グラフィックワーク NBS-J (ニューベーシック・アート・シリーズ)

エッシャー: グラフィックワーク NBS-J (ニューベーシック・アート・シリーズ)

 
カフカはなぜ自殺しなかったのか?: 弱いからこそわかること

カフカはなぜ自殺しなかったのか?: 弱いからこそわかること

 

↑この本はまだ読んでいないけど読む予定

さらに余談だがプラハにあるカフカ像がなかなか強烈なので、ぜひいつか訪れたい。

 

サロメの乳母の話

著者;塩野七生

きっかけ;Amazon,平野啓一郎新訳の『サロメ』関連書籍から

感想;サロメにも手塚治虫を通して出会った。引用されている『七色いんこ』は手塚の演劇オタクっぷりが随所に見られる作品であり、その大人びた作風が小学生にはいくら何でも早すぎた。題材としてのファム・ファタールは、他にも『人間昆虫記』『奇子』などにも見られる。手塚の描く美女はそれだけで画集ができてしまうほど魅力的で、未だに私たちを惹きつけてやまない(私の中でイチオシは『ドン・ドラキュラ』のチョコラ)。また、ワイルドの『サロメ』はビアズリーの挿絵でも有名だが、手塚からビアズリーへの明らかなオマージュが『MW』だ。倒錯した愛のグロテスクさと見事にマッチしている。『MW』の中のサロメは主人公の結城で、これもまた曲者である。しかし塩野の描くサロメは違う。とても人の運命を弄ぶいたいけな美少女ではなかった、という見方を乳母を通して語らせる。歴史に「もし」はないが、語る人の目線によってこんなにも変わるものかと改めて気づかされる。ちなみに私はサロメという名前のフランス人女性に出会ったが、彼女もなかなかの食わせ者だった。また、今飲んでいるオランジーナのCMに最近起用され始めた「オランジーナ先生」の名前もサロメで驚いた。これからどんなサロメに出逢えるか楽しみだ。

サロメの乳母の話 (新潮文庫)

サロメの乳母の話 (新潮文庫)

 
サロメ (岩波文庫)

サロメ (岩波文庫)

 
サロメ

サロメ

 
サロメ (光文社古典新訳文庫)

サロメ (光文社古典新訳文庫)

 
七色いんこ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

七色いんこ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

 
人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

 
奇子 1-2巻セット

奇子 1-2巻セット

 
MW 1

MW 1

 

初めてザムザやサロメに出会ったときは、彼らの本来の姿など知る由もなかった。しかし、最初の出会いにはあまりこだわるべきではないように思う。いつか何かのきっかけで答え合わせができる日が来るかもしれないし、来なくてもそれはそれで良いのである。そもそもイメージが流布しすぎていて答えなどただ私が強調したいのは、なんとなく書店で本を眺めていても、彼らには時間や作品のジャンルを超えて鑑賞者を惹きつけてやまない魅力があるということだ。

 

 ・ヨーロッパの幻想美術-世紀末デカダンスファム・ファタール(宿命の女)たち

著者;海野弘

きっかけ;シリーズ関連著作、生協にて

感想;ファム・ファタールとは?と感じた方にはこの本をおすすめする。と言っても私もこれから読むのだが、著書の既出のシリーズからその完成度の高さ・内容の充実度は保証する(『ロシアの挿絵とおとぎ話の世界』『チェコの挿絵とおとぎ話の世界』『ウィリアム・モリス - クラシカルで美しいパターンとデザイン-』が特に素敵)。表紙は『接吻』で有名なクリムトの『ダナエ』で、これもまたとんでもない。浮気公認(?)ギリシア神話の中でゼウスは美女を誘惑するために様々な姿に変身するが、中でも対ダナエ戦はすごい。「黄金の雨」などと表現されているので美しく聞こえるが要は精子で、その結果見事ペルセウスが誕生する。しかしレイプ被害話になると必ず一人はいるおじさんが言いそうだが、ダナエもダナエで無防備すぎである。この題材でテツィアーノやレンブラントも描いているが、やはりクリムトのものが一番好きだ。そこにはもはやレイプがどうのとかの議論を挟む余地がないほど見とれてしまう静けさと、いやらしくないエロさがある。話が逸れすぎたが海野弘のシリーズは本当におすすめである。扱っているテーマも幅広く装飾も美しい。私はこれらをスキャンするために春休み中家のプリンターを占拠していたのため母からクレームが来た。

ヨーロッパの幻想美術-世紀末デカダンスとファム・ファタール(宿命の女)たち-

ヨーロッパの幻想美術-世紀末デカダンスとファム・ファタール(宿命の女)たち-

 
ロシアの挿絵とおとぎ話の世界

ロシアの挿絵とおとぎ話の世界

 
チェコの挿絵とおとぎ話の世界

チェコの挿絵とおとぎ話の世界

 
ウィリアム・モリス - クラシカルで美しいパターンとデザイン-

ウィリアム・モリス - クラシカルで美しいパターンとデザイン-

 

2017年上半期読書まとめ①

本は個人的なものだと思っていたが、いくら多読・乱読をしようとしても一人では限界がある。私も人に紹介してもらって意外と面白い本に出会えたので、良ければ参考にしてください。書いてみて感じたが自分が好きな本を紹介するのはとても楽しい作業である。ぜひお勧めがあれば教えてください。気が向いたら読みます。

 

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉

著者;小坂井敏晶

きっかけ;出口治明(@p_hal)さん | Twitter←仕事に効く教養としての「世界史」の著者

感想;これほどタイトルで損をしている本はない。中身は様々な分野を引き合いに出しつつも内容が非常によくまとめられていて読みやすい。新書などで1/3の簡略版を出しても売れると思う。個人的には認知不協和理論の部分が悔しくなるくらい納得が行って面白かったと同時に少し精神を病んだ。高校生でも読めそうな本だけど高校生以下の教育(洗脳)には向かないので当時知らなくてよかった...自分もこんな論文を書いてみたい。最初図書館で借りたため分厚くて読むのに苦労したが、思わず電子版を購入してしまった。

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

 
仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

 

 

・暇と退屈の倫理学 増補新版 

きっかけ;姜尚中『悩む力』

感想;上の本とダブルパンチで読んでほしい。タイトルからして衝撃的だが、内容は上と同様、非常に読みやすい。定住革命と産業革命の結果、近現代人が直面せざるをえない暇と退屈(実は二つは同じものではない)の問題を提示し、その解決を試みている。二冊とも読んでいて悲しくなるのは、所詮私たちは自分の頭で考えている錯覚をしつつ、環境から多大な影響を無意識下に受けて行動している(させられている)にすぎない、ということだ。また、暇や退屈について考えることは労働に直結している。姜尚中の『悩む力』を読んで少し病んだら、こちらを読んだら私が経験したように少し楽になるかもしれない。 

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)
 
悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

 
続・悩む力 (集英社新書)

続・悩む力 (集英社新書)

 

 

マイケル・ジャクソンの思想

著者;安冨歩

きっかけ;姉

感想;「子どもが子ども時代を奪われる」問題に取り組んだ人物としてのマイケルや、彼の歌の歌詞に秘められたメッセージを解読しようと取り組んでいる一冊。「ジャムする」「魂の脱植民地化」など、鳥肌が立つようなキーワードが盛りだくさん。著者は確実にぶっ飛んでいるが、本の中でその考えの文字化に成功しているため、彼の頭の中を知ることができるのは非常に有難い。東大でこんな授業がやっているとしたら受講してみたい。

マイケル・ジャクソンの思想

マイケル・ジャクソンの思想